下請法とは?支払期限・減額・買いたたきへの対処と、資金繰りを守る交渉・相談の進め方

中小企業の資金繰りが悪化する原因は、売上の減少だけではありません。「売上は立っているのに、入金までの期間(支払サイト)が長すぎる」「突然の減額や値引き要請で利益が圧迫されている」といった取引条件の問題も大きな要因です。

こうした取引上の不利な条件や不公正な扱いから受注側(下請事業者)を守るためのルールとして、「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」があります。

本記事では、受注側の中小企業経営者や経理担当者に向けて、資金繰り改善の視点から下請法のポイントを解説します。法律の専門的な解釈ではなく、「自社の資金を守るために何を確認し、どう交渉・相談すべきか」という実務的なアクションを中心にまとめました。

目次

下請法(下請代金支払遅延等防止法)の基礎知識

下請法は、発注者(親事業者)と受注者(下請事業者)の取引を公正にし、受注者の利益を保護することを目的とした法律です。資本金規模や取引内容によって適用の有無が決まりますが、一般的に中小企業が大企業から製造や修理、情報成果物作成、役務提供などを受託する場合に関わってきます。

資金繰りの観点で特に重要なのは、発注側に対して「支払期日を定める義務」や「遅延利息の支払義務」などを課している点です(適用可否や判断は取引形態等で異なります)。

※適用の詳細な条件については、公正取引委員会の公式サイト等で最新情報をご確認ください。
参考:公正取引委員会|下請法

資金繰りに直結する下請法の論点

資金繰りを安定させるためには、入金のタイミングと金額が適正であることが大前提です。ここでは、資金繰りに影響を与えやすい論点を整理します。

支払条件の確認ポイント(検収・支払期限・支払日の整理)

【表①】受注側が注意したい「資金繰りに直結する論点」早見表

論点受注側の困りごと典型例まず確認する資料次のアクション
支払期限・遅延入金が遅く、支払いに間に合わない「支払いは納品から4ヶ月後」「月末締め翌々月末払い」等発注書、契約書(支払条件欄)サイト短縮の相談、つなぎ資金検討
減額予定していた入金額が減り、資金不足に「端数切り捨て」「協賛金名目での差し引き」等請求書と入金記録の照合減額理由の確認(根拠の整理・書面化)
買いたたき利益が出ず、運転資金が回らない「原材料高騰を無視した価格据え置き」「一方的な単価決定」見積書、市況データ、価格交渉記録価格改定の協議申し入れ
返品・やり直し再作業コストで資金流出、入金遅れ「受領後に発注側の事情で返品」「不明確な基準での修正」検収書、仕様書返品・修正理由の明確化
発注書が出ない金額や期日が曖昧で資金計画が立たない「口頭発注」「後から書面交付」メール履歴、チャット履歴、打ち合わせ議事録発注内容・支払条件が分かる書面の交付依頼

特に「支払サイト(入金までの期間)」は、自社のキャッシュフローに直結します。下請法では、原則として「物品等の受領日から60日以内」かつ「可能な限り短い期間」で支払期日を定めることが求められています(適用関係や起算点など、詳細は公式情報の確認が必要です)。

長期の手形サイトなどで資金繰りが厳しい場合は、こうした原則を背景に、条件の見直しを相談する余地があるかもしれません。

資金繰りの全体像を把握するには、以下の記事も参考にしてください。
資金繰り改善ロードマップ はコチラ

問題になりやすい行為と実務上の注意点

下請法では、親事業者(発注側)に対していくつかの禁止事項を定めています。これらは重要なルールですが、実務上は曖昧なまま処理されてしまうことも少なくありません。受注側としては「何が論点になりやすいか」を把握し、記録を残しておくことが防衛線になります。

下請法で問題になりやすい行為(支払遅延・減額・買いたたき等)の整理

1. 受領拒否と返品

発注内容に沿って納入しようとしたにもかかわらず、発注側の都合(「在庫が余った」「計画変更」など)で受け取りを拒否したり、受領後に返品したりすることは、状況によって問題となる可能性があります。仕様・検収条件・変更指示の有無など、前提を整理することが重要です。

2. 支払遅延

定められた支払期日までに下請代金を支払わない行為です。資金繰りが悪化する大きな要因となり得ます。万が一遅延が発生した場合、遅延利息が論点になるケースもあります。

3. 減額(振込手数料の差し引き等)

あらかじめ定めた代金から、発注側の都合で金額を減らす行為です。「振込手数料を事前の合意なく差し引く」といったケースも、状況によっては問題となる可能性があります。契約時に手数料負担について取り決め、請求額と入金額の差分が出た場合は内訳を確認して記録に残しましょう。

4. 買いたたき

発注する物品等と同種・類似のものの対価に比べ、著しく低い代金を不当に定めることが問題となり得ます。近年では、原材料費やエネルギー価格の高騰分を価格に転嫁できないケースが問題視されており、関係機関も注意喚起を行っています。

参考:中小企業庁|取引適正化・パートナーシップ構築宣言

まずやること:証拠・記録を整える

「おかしいな」と思っても、いきなり相手を問い詰めたり、公的機関に相談したりするのはハードルが高いものです。まずは、事実関係を客観的に示すための「記録」を整えることから始めましょう。交渉するにせよ相談するにせよ、記録がないと論点整理が難しくなります。

不利な取引条件への対処フロー(記録→相談→交渉→公的窓口)

【表②】証拠・記録のチェック表

残すべきもの具体例保存のコツ注意点
基本契約書・覚書取引基本契約書、支払条件に関する覚書PDF化し、共有フォルダ等で保管自動更新条項や解除条件も確認
発注の記録発注書、注文書、仕様書案件ごとにフォルダ分けメール/チャットの指示も保存(発注内容が分かる形に)
見積・価格根拠見積書、積算資料、単価表提出日時の記録を残す値引き要求があった場合の修正履歴も残す
納品・検収の記録納品書、受領書、検収通知メール受領日(日付)が明確なものを優先口頭での「OK」はメールで復唱確認しておく
支払いの事実請求書、入金通帳のコピー請求額と入金額の差分を明記振込手数料や相殺項目の内訳を整理
交渉・連絡履歴メール、チャット、議事録「いつ」「誰が」「何を」言ったか電話の内容は直後にメールで送って記録化

交渉の進め方と相談先

記録が整ったら、次は状況の改善に向けたアクションです。いきなり強い言い方をするのではなく、まずは取引関係を維持しながら改善を求める「ソフトな交渉」から入るのが一般的です。

受注側の交渉ステップ

  1. 事実確認(社内):記録を元に、契約内容と実態のズレを整理する。
  2. 担当者への相談:「経理処理の確認」というスタンスで、入金サイトや減額の理由を尋ねる。
  3. 書面での協議:口頭ではなく、メールや文書で条件変更(サイト短縮や価格改定)を依頼する。
  4. 外部窓口への相談:当事者間での解決が難しい場合、専門機関の知恵を借りる。

交渉の際は、「違反です」と攻めるよりも、「原材料高騰の影響で資金繰りが厳しく、安定供給のためにご協力いただきたい」といった、事業継続のための協力要請という形を取ると角が立ちにくいでしょう。

【表③】相談先の整理

相談先向くケース期待できること注意点
社内(経理/営業/役員)事実関係の整理、方針決定現状把握、社内意思の統一感情的な判断にならないよう客観データを準備
取引先の担当・上長関係維持前提の条件変更実務レベルでのミス修正、条件見直し相手の立場も考慮し、現実的な落とし所を探る
下請かけこみ寺相談先が分からない、まず状況整理したい相談対応、状況に応じた案内個別事案の扱いは状況により異なる
公正取引委員会悪質な疑い、影響が大きい情報提供・相談先の案内(対応は状況による)具体的な事実関係の整理が重要
弁護士等契約・回収・紛争対応を含めて相談したい法的観点での助言、代理交渉(依頼内容による)費用が発生する場合がある

参考:公益財団法人 全国中小企業振興機関協会|下請かけこみ寺

どうしても資金繰りが厳しいときの選択肢

取引条件の見直しは重要ですが、合意までに時間がかかることもあります。「今月末の支払いが間に合わない」「交渉中のつなぎ資金が必要」という場合は、別の手段も並行して検討する必要があります。

銀行融資だけでなく、保有している売掛金を早期に資金化する「ファクタリング」なども、緊急時の選択肢の一つです(条件により異なります)。

詳しくは以下の記事で解説しています。

資金調達の比較 はコチラ

ファクタリングとは はコチラ

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取引条件点検チェックリスト10

最後に、自社の取引が適正かどうか、資金繰りに悪影響を与えていないかを点検するためのチェックリストを用意しました。定期的に確認することをおすすめします。

  1. 書面の有無:発注時に、注文書や契約書などの書面(または発注内容が分かる記録)が交付されているか?
  2. 支払期日:納品・検査完了後の支払日が明確か?(長すぎる場合は根拠を確認)
  3. 検収条件:検収基準は明確か?不当に長い検収期間が設定されていないか?
  4. 単価の根拠:見積の根拠は明確か?一方的に決められた単価ではないか?
  5. 減額の有無:請求額と入金額に差がないか?差がある場合、内訳を説明できるか?
  6. 振込手数料:振込手数料の負担が取り決められているか?
  7. 返品・やり直し:返品や再作業が発生した際、費用負担や理由が明確か?
  8. 相殺項目:相殺がある場合、その根拠や計算内容に合意があるか?
  9. 連絡履歴:重要な指示や変更が、口頭だけでなく記録に残っているか?
  10. 資金繰りへの反映:入金サイトのズレを資金繰り表に反映して管理しているか?

よくある質問(FAQ)

Q1. 下請法はどんな取引に適用されますか?

一般的に、資本金規模の大きな親事業者(発注者)から、規模の小さな下請事業者(受注者)へ製造、修理、情報成果物作成、役務提供などを委託する場合に適用されます。具体的な資本金区分や対象取引は条件で異なるため、公正取引委員会の資料等で確認するのが確実です。

Q2. 支払サイト(支払期限)はどのように考えればよいですか?

下請法では、原則として物品等の受領日(役務提供日)から起算して60日以内で、かつできる限り短い期間内に支払期日を定めることが求められています。適用関係や起算点の整理が必要なため、公式情報もあわせて確認しましょう。

Q3. 「減額された」「値引きを強要された」場合、まず何をすべきですか?

まずは事実確認です。請求書と入金額を照合し、差額の名目(手数料、協賛金、歩引き等)を整理してください。そのうえで、発注担当者に理由を確認し、やり取りを記録に残すことから始めましょう。

Q4. 買いたたきかどうか、どう判断すればいいですか?

「通常支払われる対価に比べて著しく低い」かどうかがポイントですが、個別事情で判断が分かれることもあります。原材料費の高騰などの根拠資料(原価・相場・見積)や協議の記録を整えておくと、交渉が進めやすくなります。

Q5. 証拠が少ない場合でも相談できますか?

可能です。「下請かけこみ寺」などの窓口では、状況を聞き取ったうえでアドバイスを受けられる場合があります。手元にある資料からでよいので、まずは現状を整理して相談してみるのがおすすめです。

Q6. 取引を続けたい場合、角が立たない交渉の進め方はありますか?

「違反だ」と断定するのではなく、「安定供給のため」「品質維持のため」といった共通の利益を軸に相談するのが一つの方法です。支払条件や単価の見直しが必要な背景(原材料高騰、再作業負担など)を、数字と記録で説明できる形にしておくと進めやすくなります。

まとめ

下請法は、受注側である中小企業を守るための重要なルールです。ただし、資金繰りの改善につなげるには、日々の「記録」と、段階を踏んだ「アクション」が欠かせません。

まずは契約書や発注書、入金記録を再確認し、不明瞭な減額や長すぎる支払サイトがないかを点検してみてください。資金繰りに不安がある場合は、早めに状況整理と対策の検討を進めましょう。

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